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「…トール…代わりに飲んで…コホッ、コホッ…」
「俺が飲んでどうするんだよ。…熱で自分が何言ってるか分かってないだろ……」
腕の中の夏蓮にため息を吐いた。しかし不意にその表情を止めた。そうして腕の中の夏蓮の頭に手を添えて、母親が小さな子供にするように、静かに胸から離した。
「……………………いいよ。代わりに飲んでやろうか?」
返事をする代わりに、夏蓮は嬉しそうに潤んだ瞳を細めた。
透はそのままの姿勢で薬袋を手にし、自分の口に運んだ。そうして空になった袋をトレイに戻すとグラスに手を伸ばし、水を口に含んだ。
グラスをトレイに戻した透は安心しきったような表情の夏蓮の顎に手を添えた。ぐったりとした夏蓮の唇からは、小さく苦しそうな息が漏れていた。
透は添えた手の親指を少し下げた。熱で弱々しく小さく震える柔らかな唇をゆっくりとなぞり、唇に、唇を重ねた。
「ん…んん………」
唇の間から夏蓮の吐息と、僅かな水が漏れる。
「ゴクリ」と溜飲したことを確認した透は、静かに唇を離した。
「苦……」
眉を僅かひそめた夏蓮が漏らした言葉に、透はもう一度グラスに手を伸ばし口に含むと、再び唇を重ねた。今度は一滴も漏らすまいと。
「ん…ん………」
コクり、コクりと飲む夏蓮から、名残惜し気に唇を離した。
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