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どうにか夏蓮の熱が下がったのは、3日後のことだった。しかしまだ完全には下がりきってはなく、今日も大事を取って休んでいた。
そんな夏蓮の部屋から時折笑い声が漏れる。クラスメイトが見舞いに来ていたのだ。
「…それでさ、佐藤ちゃんの奥さん、実家に帰っちゃってんの!」
「気の毒~っ!」
「どっちがよ?」
「どっちも~!」
「…もう。涼ちゃんも泉ちゃん菜緒ちゃんも…3人とも、そんなに笑ったら佐藤先生が可哀そう」
「そう?佐藤ちゃんも案外今頃羽を伸ばしてんじゃない?」
「うんうん」と頷く2人を、ベッドに半身を起こした夏蓮は、呆れ顔で見やった。
「そう云えば夏蓮」
「ー?」
「坂下先輩とはどうなってんの?」
不意に涼子が訊いてきた。
「どう、って?」
「またぁ~!とぼけちゃって」
「坂下先輩、夏蓮が休んだ日、ウチのクラスに来たんだよ。朝姿を見なかったけど、どうかしたのかな。って」
「心配掛けちゃったのかな…悪いことしちったな。でも急だったから…」
「やだ~!ナニそれー」
「そうじゃないよ、夏蓮」
「?」
「坂下先輩、夏蓮のこと好きなんだと思うよ」
「坂下センパイが…?わたしのことを…?」
「何、夏蓮、気付いてなかったわけ!?」
「信じられなーい!毎朝一緒に来ててー?!」
「一緒って…それは方向が一緒だから…」
「夏蓮、坂下先輩んチ、どこか知ってる?」
「○×町でしょ?」
「違うよ!」
泉と菜緒が同時に声を上げた。
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