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「あのさ」
「うん、なあに?」
声に振り返ると、見るものを引き付ける真っ直ぐで印象的な瞳が、小さく揺れている。
「あのさ…」
「ーうん?」
「パンくず付いてる」
「ウソっ!?」
指差された左頬を指で確認し「ね、取れた?もう付いてない??」と顔を寄せ、透の半袖の裾を引っ張った。
「…付いてる」
それだけ言うと透はフイと顔を反らし、カバンを手に立ち上がった。
「えっ、ドコ?ドコ??」
夏蓮は慌てポーチからハート型のミラーを取り出した。
「…ドコに付いてるの??」
玄関のドアの開く気配に、夏蓮は透を追いかけた。
「ねぇ透、ドコに付いてるの!?」
「付いてるじゃん。目と鼻。それに口がさ」
「え…?」
プッ、と吹き出す透に、ようやくからかわれていたことに気付いた。
「もう、トオル~っ!」
「あははは…!何回騙されたら気が済むんだよ。くく…っ!まあ、それが姉さんらしいと言えばらしいからいいんだけどね」
「💢そんなこと言うなら今度の地区予選、応援になんて」
「来なくていい!」
「え…?」
「来なくていいから」
ピシャリと言うと放心の夏蓮を残し後にしたのだった。
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