偽りの国

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木々が青々と繁る森の中を、一台のモトラド(注・二輪車で空を飛ばないものを指す)が颯爽と走っていた。  通る小道はそれなりに整備されていた。  「ねえ、キノ」  「ん?どうしたのエルメス。」  キノと呼ばれた運転手は黒いジャケットを着て、鍔と耳を覆うたれのついた帽子をかぶり、所々剥げかかった銀色フレームのゴーグルをしていた。  腰を太いベルトで締めて、右太腿にはハンド・パースエイダー(注・パースエイダーは銃器。この場合は拳銃)を吊っている。革製のホルスターに収まっているのは、大口径のリヴォルバーだった。  「うそつきだったね。」   「あぁ。うそつきだった。」  エルメスと呼ばれたモトラドは、それだけ言って前を、おそらく前を見た。  キノも、それだけいって運転に戻った。
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