42人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
木々が青々と繁る森の中を、一台のモトラド(注・二輪車で空を飛ばないものを指す)が颯爽と走っていた。
通る小道はそれなりに整備されていた。
「ねえ、キノ」
「ん?どうしたのエルメス。」
キノと呼ばれた運転手は黒いジャケットを着て、鍔と耳を覆うたれのついた帽子をかぶり、所々剥げかかった銀色フレームのゴーグルをしていた。
腰を太いベルトで締めて、右太腿にはハンド・パースエイダー(注・パースエイダーは銃器。この場合は拳銃)を吊っている。革製のホルスターに収まっているのは、大口径のリヴォルバーだった。
「うそつきだったね。」
「あぁ。うそつきだった。」
エルメスと呼ばれたモトラドは、それだけ言って前を、おそらく前を見た。
キノも、それだけいって運転に戻った。
最初のコメントを投稿しよう!