偽りの国

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 陸はやや言いにくそうに、しかし、やはり笑顔で答えた。 「申し訳ありません。この料理の独特なにおいのせいで何の匂いなのか特定までは……。」  すると、  「教えてあげましょうか?その正体。」  向かいの席――ちょうどシズの背後の席――に座っていた女性が言ってきた。  女性は広い鍔の黒い帽子をかぶり、黒のジャケットと膝丈の黒のスカートを身につけていた。  「失礼ですが、あなたは?」  全身黒ずくめの妙齢の女性はペコリとおじぎをして、  「申し遅れました。私はこの国の機関で総務部長をしておりますシティと申します。」  と名乗った。
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