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「先週来た時、業務管理部からまだ書類が出来上がってなくてな。
郵送しようと思ったんだけど、ちょっと急いで取り付けたいもんで、悪いね」
「行きません。……他の人に頼んでもらえませんか」
喉が熱を持って、涙腺がまた緩みそうになる。
「原澤が」
急にトーンを落とした声になった。
「バカみたいに心配してたぞ。詳しくは言わねえけど……
会社のアドレスも拒否ってんのか?」
「……ほんとに、もう勘弁してください。
これ以上苦しい思いもしたくないし、嫌な女にもなりたくない」
反論する声が不安定に揺れる。
限界だ。
「原澤がどんな男か、もっと良く見てこい」
うつむいていた顔をはっと上げる。
父親の顔をした部長が続けた。
「どんな奴で、大阪でどう暮らしてんのか。どう働いてんのか。
ちゃんと自分で見てから終わりにしろ。
一部分だけ見て、勝手に好きだのやめたの言うんじゃねえ」
ささくれだった心にすっと沁みわたる言葉が、覚悟をくれた。
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