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耀がどんなふうに大阪で暮らしているのか。
どんなふうに働いているのか。
知りたくないわけじゃなかった。
たけど、結局は叶わない恋だったと思い知らされるのが怖かった。
つかの間の幸せな時間を奪われてしまうことを恐れて、すべてを知ることに蓋をした。
「──次は名古屋、名古屋に停まります」
東京発ののぞみ、2人席の窓際。
同じ屋根の家がひしめき合う住宅街、生命力をたたえる富士山、広がる茶畑、田園。
きっと耀も、いつもこんな風景を見ているんだろう。
そう思うと妙に感傷的になって、
不安よりもいとおしさを感じた。
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