459人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねえ──ねえ谷口さん」
一緒にいた社員…たぶん彼より先輩なんだろう、少しぎょっとした顔でこちらを見ている。
その先輩が制止するより早く。
「──今日俺たち飲みに行くんだけど、一緒に行かない? 早坂さんも良かったら」
……なるほど、話し方からするに年下に見えたのかな。私が。
誰だか、知らないけど。
顔には出ていないはずだけど、後ろの先輩社員が、強張った顔のまま私と彼を見ているのがわかった。
「ごめんなさい、私も早坂さんもちょっと予定があるから……また今度でもいいかな?」
笑顔を作り、小さく首を傾けて適当な嘘を答える。
先輩がその隙間に入り、
「──早く行くぞ」
なにごともないふりをして、彼を連れて行ってくれた。
.
最初のコメントを投稿しよう!