来訪者

4/32
前へ
/124ページ
次へ
  「29さいぃ!? 嘘でしょ」   テラスから、先程の彼の大きな声が聞こえて 反射的に胸がきゅっと締まった。   「馬鹿、声でかい。で、しかも聞いた話だけど谷口さんって……」 「えええええええっ! ……うわー、イメージ違いすぎ……」   「だろ?だから──……」   ──よくご存知なもので。 あの反応からすると、もう誘わないでくれそうだ。   彼らが戻る時を見計らって、受付から離れようかな。そう思った時、後ろから歌うような声がした。  「藍さん。おはよーう」     「おはよ、ルリちゃん。ちょっとスカーフ直してくるね」    『ミツフジ不動産 受付  早坂 ルリ』 小さなネームプレートをつけ直しながら、彼女はにっこりと笑って見送ってくれた。   .
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!

459人が本棚に入れています
本棚に追加