来訪者

7/32
前へ
/124ページ
次へ
  スーツ姿の男性が自動ドアの向こうに現れたのを見つけ、私たちは姿勢を正した。     「いらっしゃいませ」   「おはようございます。田川部長と約束していた、原澤といいます」   ドアから一緒に入ってきた風が、来訪客の黒い髪をさらさらっと揺らす。   「原澤様ですね、お待ちしておりました。営業開発部の田川とお約束でしたね」 話しながらルリをちらりと見る。 既に応接室の確認が済んだようで、目で合図を返された。 こういう連携が一番スムーズに行くのがルリだ。   「すぐご案内いたしますので、こちらへお名前をご記入いただけますか」 『guest』と書かれたネームプレートとゲストブックを差し出すと、彼は鞄を足元に置いてペンを取った。   .
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!

459人が本棚に入れています
本棚に追加