第一章(4)アインさんと謎の美女と戦車男

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「ハーミット、俺の物となれ。そして俺と共に楽しもうではないか……………」 なにを言ってくるかと思えば、鳥肌が立つほどドン引きするようなことを言う。 「アソコがポークビッツ野郎に口説かれてもちっとも嬉しくねぇ、特にテメェ相手なら。嫌気がさす。吐き気がする。血の気が引く。虫酸が走る。血反吐が出る」 何か誰かからの電波を受信したかのように、俺はすらすらとアザルにツッコミを放っていた。さらに俺は続ける。 「俺はテメェみたいに無理矢理女の子を犯すなんざゴメンだ。それ以前にテメェと同じ空気なんか吸いたくねぇんだよ、とっとと失せろ弱小×××野郎が!!!」 俺は中指だけを立てて、アザルに向けて完全否定の意を示す。後ろの『白鴉』の男の何人かが俺の方に罵声を浴びせながら迫りよってきたが、アザルは片手を後ろに突き出して制止させる。 「いや、お前も心のどこかで女は男の玩具にすぎないと思っているところがあるはずだ。お前も本当は快楽を得たい、自分の性器で女を何度も何度も突き上げたいと思っているはずだ………………… 女は所詮男が居なければ何も出来やしない脆弱な存在。そんな存在を男が弄んで何が悪い?快楽を得るための行為のどこが悪い? さぁハーミット、もう一度聞く。俺の物となれ。昔共に戦った仲だ。共にこの地を楽しもうではないか、ハーミット」 時は残酷だ。時は人間を蹂躙し、支配し、ねじ曲げてしまう………。もうこの男は『戦車』じゃない。俺が軍人として尊敬した男、アザル・オルトマンじゃない。この男は………………堕落しきった只の変態野郎だ。性欲が赴くままに女を弄び、貪り尽くし、要らなくなれば殺すような最低な変態共の犯罪組織『白鴉』の首領アザル・オルトマンだ。 俺はいつの間にか奴の胸ぐらを掴んでいた。190cmを越える巨体を持つ男を、170cmにも満たない俺が掴み上げる。嫌なまでに流したくなかった涙が、何故か俺の瞳を濡らした。 「なぁ、チャリオット。何がお前をそこまで変えたんだ………?どうしてお前はそこまで堕落しちまったんだよ………?お前はそんな人間じゃなかった!!!俺の尊敬したチャリオットはどこにいっちまったんだ!!!?答え…………」 俺の言葉は完全に途切れてしまった。全身が強烈な衝撃で喰い荒らされた。その衝撃の根元……………それは腹だ。腹の部分が異常に熱かった。痛みは感じない。
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