序章 白き薔薇は朱に染まる

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「ごきげんよう」 登校中の生徒に野薔薇は微笑み掛ける。 「ご、ごきげんよう」 微笑み掛けられた生徒は足を止めた。 「職員室を教えていただけますか?」 「あ、はい」 生徒は、戸惑いながらも野薔薇を職員室へ案内する。 「ありがとう」 野薔薇は微笑み、職員室に入た。       「はじめまして、如月野薔薇です。色々迷惑をお掛けしますが仲良くしてください」 野薔薇の挨拶とともに教室中が騒がしくなる。 「では、如月の席は後ろの空いている席だ…小野寺、手を上げろ」 教師に言われ、小野寺美紀が手を上げる。 野薔薇は美紀に近づき、 「よろしく」 と言った。 「よろしく…」 美紀は野薔薇を見つめ、溜め息を吐く。 「どうかしたの?」 「あ、いえ…綺麗だなーって」 そう言い真っ赤になる美紀。 「クスッ…ありがとう」 野薔薇は美紀へ微笑み掛ける。   昼休み やっと止んだ転校生に対する質問の嵐に疲れた野薔薇は、中庭へと向かった。     弁当を食べ終わりボーっとする野薔薇の前へ現れた美紀。 「如月さん、疲れたでしょ」 美紀のその質問に野薔薇は苦笑を浮かべる。 「如月さんって、不思議ね。凄く大人びてるわ」 「そうかしら…自分では分からないわ」 そう答えてはみたものの、大人びていて当然だ。 「ねぇ、如月さん。今日の放課後…暇?」 恐る恐る訊いてくる美紀に野薔薇は頷く。 「良かった~。じゃあ、二人で遊びに行こ?」 その美紀の提案に野薔薇はニッコリ微笑み、 「えぇ。是非」 と答えた。     美紀はまだ知らない。 その提案こそが自分へ降りかかる運命の歯車を早めた事を……     「史人、私。……うん。予定よりだいぶ早く終わるわ。……えぇ。後でね…」  
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