憂鬱

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意味深な言葉を残し健志さんが出てった後、俺は彼が先程まで居た空間をただじっと眺めながら、そこから暫くの間、微動だに出来なかった。 何が起こった? 動こうとしない脳を無理矢理働かせて考えようとはするが…… 浮かんでくるのは先程の濃密な時間だけだった。 あれほど否定していた想いは、想定外の出来事によりあっさりと肯定され…… 健志さんへの気持ちを、認めない訳には…… 俺はその事にやり場の無い怒りを感じたが、どうする事も出来そうになかった。 せめて追い掛けて、彼に文句の一つでも言いたいが…… 俺はおそらく何も言えないだろうな。 またあの目で見つめられたら、俺の怒りなど簡単に消えてしまう事など、考えずともすぐに分かる。 とにかく落ち着きたくて、無性に煙草が吸いたくなったが、生憎煙草は席に置いてきてしまった。 まいったな…… 頭を抱えてその場に座り込み、俺は心が落ち着くのをひたすら待った。 いくら待ってもこのざわついた心は、鎮まりそうに無かったが……
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