憂鬱

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「はははは……」 気付くと俺の口からは、乾いた笑い声が勝手に零れていた。 余りにも滑稽過ぎる自分自身が……可笑しくて仕方なかった。 出会って数時間しか経っていない、名前しか知らない相手に心を奪われ……嫉妬し、揚句に気の無い素振りまでするとは全く俺らしくない。 相手が男だろうと、いつものゲームに持ち込んで、相手に惚れさせたら勝ち逃げすればいいものを、一体何をやってるんだ? 女は暫くの間、訝しげにこちらを見ていたが 「ホテル行こうか」 とけだるく一言呟いた。 正面を向いたまま、煙草を吸う女の横顔からは……何を意図してそう言ったのかは読み取れなかったが……… 悪くない提案だった。 俺は返事をする代わりに、女の分の代金も素早くチェックし、肩に手を回すと店から連れ出した。 店のドアが閉まると、先程までの喧騒はまるで別世界だったかのように、静寂だけが俺達を包む。 無言で歩きだす俺に肩を抱かれたまま、女は黙って着いて来た。 俺は何をやってるんだ? 見上げた夜空には、星一つ見付けられ無かったが、今の俺にはお似合いな気がした。
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