9659人が本棚に入れています
本棚に追加
「似た者同士が傷を舐め合っても……結局虚しいだけなのにね」
エリはそう言うと、煙草を俺に返し何処か遠くを見つめていた。
受け取った煙草を一口だけ吸った後、俺は彼女に尋ねた。
「お前も……叶わない想いを抱えてるのか?」
彼女は視線を俺に戻すと、暫く考えていたようだったが
「まぁ、近い感じかしら?叶うか叶わないかは努力次第ってとこね」
そう言って寂しそうに微笑むと、そっと俺の肩に顔を寄せた。
努力次第か……
エリの温もりを肩に感じながら、この狂おしい感情はどうするべきなのかを考えていた。
激しい流れに身を任せたら……俺は何処に行き着くのだろうか?
答えは既に目の前に出ているが、まだ認めたく無い俺はギリギリのラインで踏み止まっていた。
風邪のように数日経ったら、治ってしまえばいいのに。
そんな望みは叶うはずが無いのだが……
「朝まで少し眠りましょう。考えたってすぐには答えなんて見付からないわよ」
そう言われて、俺は素直に並んで横になった。
エリは不思議な女だ。
何故か彼女の前だと素直になれた……
最初のコメントを投稿しよう!