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変わればチャンスが訪れるかもしれない。そんな淡い願いは消えてしまいそうだった。
変われば変わる程、健志は離れていく。
どうすれば彼を振り向かせる事が出来るのだろう?
健志の好みになろうと女らしく努めてはいたが、彼以外の男には全く興味は無かった。相変わらず、軽そうな女には目がいくし、一夜限りでも寝たいとすら思ったりしている。
男が好きなのでは無い。健志が好きなのだから……
わたしは、中途半端だ。ゲイでもノーマルでも無い。真似事をして、健志の世界に足を踏み入れたつもりでいるけど……
そんな中途半端さを健志は怒っているのかもしれない。
「どうしたらいいのかしら?」
そうため息と一緒に呟いて、わたしは煙草に火を点ける。ゆらゆらと上へ昇って行く煙りを目で追っていると、ずっと黙って話を聞いていたエリが口を開いた。
「もしかしたら亮は、変わらない方がチャンス有ったんじゃないの?」
「えっ?」
驚くわたしを見て、エリは苦笑いを浮かべていた。
エリの言葉の意味が、わたしは理解出来なかった。変わった事が間違いだったのだろうか?
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