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「それで話って何?」
目の前の健志は、電話で感じた通り不機嫌だった。わたしの話に興味は無いが、一応義務的な感じで聞いてやるよ。そんな彼の態度は、わたしにかなりのダメージを与えていた。
だけど何かがおかしい。
わたしと関わる事を避ける為だけに、そんな態度を取っているような感じではなさそうだった。
いつもの健志らしくなかった。
「何かあったの?」
わたしは溢れ出る疑問が止められずに、思わず健志に尋ねてしまっていた。彼はわたしの問いに一瞬だけ動揺して、またすぐにいつもの表情に戻っが、わたしはその動揺を見逃さなかった。
「どうしたの?」
「何でもない」
「嘘!どうしたの?」
「……お前は誤魔化せないか」
しつこく尋ねていると、やっと観念したのか彼は呟いた。
その顔には先程までのわたしを拒絶していた表情は消え、深い悲しみが浮かんでいた。
「……あいつ出て行ったんだ」
「えっ?」
あいつとは、おそらく少し前から付き合い始めた恋人の事だろう。健志にしては珍しく、凄い勢いで押して押してやっと手に入れた恋人だった。順調に付き合い、同棲までしていたはずだった。
「どうして?」
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