憂鬱

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扉を開けると…… 男女の話し声や笑い声、洋楽、食器の鳴る音すべてがごちゃまぜになって、音の波が俺に押し寄せる。 いつも兄貴が仲間と集まってる店は、ショットバーと居酒屋が混ざったような不思議な店なんだが……俺はこの場所は嫌いじゃなかった。 「おっ!来た来た!亮こっち来いよ」 すでにほろ酔いは通り越してしまった兄貴が、入口で店内を見渡していた俺を見付けて叫んでいる。 出来れば…… そこのカウンターで、つまらなそうに酒を飲んでる女の隣に座りたい所なのだが、今は一旦諦めて兄貴達が飲んでる席へと向かった。 今夜の第一候補は決まったし、適当に挨拶して抜けるか。 俺は愛想笑いを浮かべて、空いていた席へと座った。 「こいつ俺の弟の亮。寂しい奴だから宜しく頼むよ!」 兄貴はいつも通りに俺を紹介すると、そこに座っている仲間を紹介し始めた。 俺は適当に『どうも』や『宜しく』を繰り返して、後は話を聞いているふりだけをしていた。 その中の二人は、すでに見知った顔だったのだが………… 最後に紹介されたその人を見た瞬間、俺の中に電流のような激しい衝撃が走った。 やばいな…… ありえないだろ。
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