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全ての始まりは、去年の夏。
夏祭りの後片付けに追われていた私は、飢え死に寸前の夜琥をうっかり拾ってしまった。
それだけなら、まだ良かったけど……
色々と話が膨らんで、妖怪の仲間が出来た。
挙句、私の中に眠っていた『力』――簡単に言うと魔力みたいなモノが目覚めて。
命を狙われる身となった。
しかし全ては私が選んだ事。
私は故郷を捨て、人間と妖の中間という、何とも微妙な立場になった。
そして仲間と共に、今もあちこちを放浪している。
まぁ『放浪』と言っても、桜前線に沿って北上する『旅』なのだが……。
これが結構面白くて、今はこの土地の桜の開花を待ち焦がれている。
例年に比べて開花の時期が遅れているから、去年よりも桜が待ち遠しい。
「それにしても」
気だるい体を持ち上げ、開け放たれた窓に近づく。
今時珍しい砂利道には誰も無く、古びた電話ボックスがポツンとあるだけだ。
「酒呑達はドコに行ったんでしょう?」
『ナンパか迷子だろう』
即答で、あり得ない回答が帰ってくる。
いくら女好きの酒呑でも、老人をナンパする趣味は無いだろうし、ココから商店まで一本道だ。
迷子になりたくても、なれるハズが無い。
「叶うことなら、テレビの銃撃犯を連れてこないかなぁ」
眠たくなるような快晴。
うたた寝をし始める私に、夜琥はそっと毛布をかけてくれた。

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