第七話

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母方の祖母にとって初孫にあたる姉は、祖母から本当に可愛がられていた。 姉も勿論おばあちゃん子で、同じ市内にある祖母宅へ一人でも頻繁に行ったそうだ。 辛いことがあると、母ではなく祖母のもとへ打ち明けていたらしい。 勿論姉だけではなく、私も従兄弟たちも皆、やさしい祖母が大好きであった。 中学生になった頃、祖母は遠くに住む長男夫婦と同居することになった。 私は寂しかったが、姉はそれ以上に寂しかったに違いない。 そして祖母もきっと、誰よりも姉のことが気がかりだっただろう。 ―――数年後のある日、真夜中に電話が鳴った。 姉が受けたその電話は、祖母が亡くなったという知らせだった。 両親は翌朝飛行機で向かうことにし、そのまま朝を待つことになったらしい。 私は期末試験の前日で、布団にテキストを広げたまま何も知らず眠っていた。 電話から数分の後、姉は金縛りになった。 そして傍らに、亡くなったはずの祖母の気配を感じた。 「○○ちゃん、○○だからね。」 優しく繰り返す祖母の声は、生きていた頃と同じ優しい声だったそうだ。 しかしそこにいるのが幽霊だとわかっていた姉は、どうしようもなく怖かった。 恐怖で目をぎゅっと閉じ、よく聞き取れない言葉に必死に頷いていたらしい。 いつも姉を気にかけていた祖母は、最後のメッセージを託しにきたのだろう。 にも関わらず『怖い』と思ってしまった自分を、姉はずっと責めていた。 「仕方ないよ、わかってくれてるよ」と慰めながら、私はやはり姉が羨ましかった。 怖くてもいい。最後に会いたかったよ、おばあちゃん。 姉ちゃんに負けないくらい、おばあちゃんが大好きだったんだよ。
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