第十二話

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長崎にカニ食べ放題のパック旅行に主人といった。 ホテルは中華街から15分、異人が住んでた丘の上の屋敷からは だいたい5分くらいのところにあった。電車どおりに面していたので、 角部屋の窓からは海が見えた。 カニをたらふく食べて、ツインの部屋に戻り、いたすことをいたしたあと、 乾燥防止のためにユニットバスに水をためて、わたしは窓際のほうのベッドで床に就いた。 季節は11月で、暖房をつけるくらい肌寒かった覚えがある。 乾燥したホテルで暖房をつけて寝るとのどが痛くなるので、 わたしは必ず空調を切って寝ることにしていた。 寝静まってしばらくたったころだと思う。なんだかものすごく暑くて寝苦しくて目が覚めた。 目を開けると、うだるような暑さとのどの渇き。 体が重たくて、起き上がれなかった。金縛りとは少し違う感じだった。 カーテンを閉め切った窓に目が行った。何も見えないけれど、たくさんの人の気配がした。 窓のほうからたくさんの人間がうなだれたままこちらに歩いてきている。 気がつくと、なにをするでもなく苦しそうな人たちがベッドを取り囲んでいた。 実際に見えていないので気のせいかもしれないけれど、 暖房を切っているのに、むんむんするような熱気が周りから押し寄せてくる。 ただ熱くて苦しいという感情が押し寄せてくる。 体は自由に動いたので、わたしはとっさにベッドから這い出て、 旦那の眠るベッドにもぐりこんだ。途端に涼しい空気に包まれた。 あたしは何にも考えずに旦那にしがみついて眠った。 次の日何の異変もなくホテルを出た。 ちなみに旦那は長崎や広島では恐ろしいものを見るので行きたがらない。
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