第十九話

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どうしたんだ、と二人が聞くと、女の声で、「あなた、『キュルキュル』の?」って繰り返されたんだと答えた。 その『キュルキュル』と言うところは、早送りにしているようで、なんと言っているのかわからず、 同じ事ばっかり聞くからきっとテープか何かでイタズラされていると思ったらしい。 なんにせよタダのイタズラだ、ということになった。楽しく鍋と刺身を食べて、疲れてたからすぐ寝てしまった。 でもそいつは、次の日に溺れて死んだ。プカプカ浮かんでて、二人は最初、正直ありえないと思った。 そいつからは、水泳を子供の頃から10年近くやってて、泳ぐのやめてからも50メートルでは36秒位は楽勝だと聞いていた。 遠泳も記録を聞く限りそれなりだったし、手足が攣っても呼吸ができるとも聞いていた。 それで、残った二人は予定を早めて帰る事にした。当然だ。人が死んだのに旅行なんかが楽しめる訳がない。 帰って数日後には葬式があった。でもそのときに、二人は、そいつが溺死じゃなくてショック死だと聞いた。 考えたらわかることだった。溺れるなら、肺に水が入って沈む。でも、浮いてたんだから肺に空気が入ってる。 二人はこういう話をそいつから会話の中で聞いていた。必ず当てはまる訳ではないことだが…とも聞いていた。 でも、林の川のような場所ならまだしも、海でショック死?二人は揃って不自然だと思った。 しかし、自分が考えても仕方ないと思ったのと、恐ろしい死に顔を思い出して、ただ心の底からひたすらに冥福を祈った。
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