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突然の事に男は驚き、思わず携帯を取り落とした。電話に出なくてはと思うが、手は震え、携帯に触れることができない。
それでも男は必死に手に取ったが、今度はボタンを押すことができない。指を当てる。ほんの少しの力で押せる。
ここで出なければどうねるのか?それを考えれば身が凍り、電話への恐怖には手が震えた。
頭が恐怖に真っ白になりかけたとき、電話が、ピッ、と軽い電子音を立てた。はっと驚き画面を見つめる。
そこには通話中、と表示されていた。強い震えのせいか、または何かの力か、ボタンは押されていた。
後は耳にあてるだけ。男は一瞬動けなかったが、そのときに、電話を切ってしまった、という言葉が頭に響いた。
彼は電話を切って死んでしまった。ならば電話が切れる前に出なくてはいけないのでは…
新しい恐怖が湧いた。すると電話を持った男の腕は、死への恐怖が勝ったのか、ゆっくりと耳へと当てられた。
そうして、搾り出すように、もしもし、と一言発した。電話の相手は答えた。
「あなた、『キュルキュル』の?」
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