第十九話

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男は凍りつき、返事をできなかった。電話は最後に喋ったあとに切れており、返事をする暇はなかった。 そのことを考えると、どうやら助かったようだった。男は緊張の糸が切れ、後ろに倒れこんだ。 葬式にいかなければならないことを思い出したり、海で死んだやつが、最後に何か怒鳴っていたことを、 何らかの肯定を返してしまったのかもしれないと考えたりと、しばらく倒れこんで 考え事をして、そのうち意識が薄れて眠り込んでしまった。 聞いた内容はここで終わり。丁度授業が終わって、それでもうこの話をすることはなかった。 ひょっとしたら続きがあったかもしれない。最後の一言までに、言っていることに気付いて 返事をしなければならなかったのかも知れない。あるいはこのまま何も起こらなかったかもしれない。 何にせよ、不気味な電話には迂闊な返事をしてはいけない。何が起こるかわからないから…
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