第六章 由衣と初音

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僕の妹である由衣は、生まれつき心臓に病をもっていた。由衣の病気は現代の医学でも治療困難な難病で未だに完治していない。 由衣は小さな頃から入退院の繰り返しだった。生死の境をさまよったこともある。 今でも時々発作が起こることがあり、寝込むこともある。 それでも由衣は明るい。病弱であることを感じさせないくらいに。 そんな由衣を一番可愛がってたのが父であった。父は亡くなるまで由衣の身を案じていた。 「初音、由衣のことを頼む。」 亡くなる直前、僕は父にこう言われた。父が僕に話した最後の言葉であった。 それから僕は父の遺言どおりに由衣を守るのが使命となった。 そして、いつしかそれは必然となった。 由衣には幸せになってほしい。それが僕の一番の願いでもある。
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