0:愚者の捧げる花束

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愚者はある日、町を歩く賢者に出会った。 その衣は飾り気もない純白であったが 愚者にとってはこの世の唯一の真実に見えた。 賢者は町の者たちに何かを言っていたが そんなことは愚者にとってはどうでもよかった。 ただ その声は今まで聞いたどんな音楽よりも美しかった。 愚者はじっと耳を傾けた。 何がこんなにも己を魅了するのかと考えながら。 賢者の調べが終わると人々は去っていった。 愚者はその場でじっと賢者を見つめていた。 その視線に気づいた賢者はゆっくりと愚者の方を向いた。 愚者は賢者の瞳の深さに溺れた。 「どうしたのか」 賢者はほほえみかけた。 愚者は急に恥ずかしくなった。
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