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愚者はある日、町を歩く賢者に出会った。
その衣は飾り気もない純白であったが
愚者にとってはこの世の唯一の真実に見えた。
賢者は町の者たちに何かを言っていたが
そんなことは愚者にとってはどうでもよかった。
ただ
その声は今まで聞いたどんな音楽よりも美しかった。
愚者はじっと耳を傾けた。
何がこんなにも己を魅了するのかと考えながら。
賢者の調べが終わると人々は去っていった。
愚者はその場でじっと賢者を見つめていた。
その視線に気づいた賢者はゆっくりと愚者の方を向いた。
愚者は賢者の瞳の深さに溺れた。
「どうしたのか」
賢者はほほえみかけた。
愚者は急に恥ずかしくなった。
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