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公久は上司と話していたトイレから離れた。
「・・・遅い」
トイレの一番近くの席にいた伊緒理が相変わらず無感情な表情と声で公久に言った。
伊緒理は今、シンプルなトレーナーとジーパン姿だ。病院て着ていた服は、適当に捨てた。
「遅かったから、先にいただいてたけど」
「かまいませんよ。貴女、お腹が減っていたのでしょう」
公久は伊緒理の隣りの席につき、用意されていた水を飲む。
ちなみに今2人がいるのは───。
「・・・・これ、なに」
「いくら。テレビで見たことないんですか」
「テレビなんて見てない。おいしいの?これ」
「・・・食べてみなさい」
「・・・・・・・・・まあまあかな」
「醤油につけて食べた方が美味しいかもしれませんよ」
───回転寿司にいた。
伊緒理が悩んで悩んだ末、ここにしたいと言ってきた。言われた通りに公久は連れてきて、好きなだけ食べさせるつもりだ。
「・・・これは?」
「とびっこ」
「これも醤油つけた方がいい?」
「ええ。・・・・寿司、食べた事ないのですか」
「ナマモノの管理は難しいとか、言われて育った。・・・ん、これもまあまあ」
「・・・そうですか」
話している時も淡々としているが、何となく伊緒理の目は病院にいたときよりも、幾分か感情が出てきているように見えた。
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