自由

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 それにかまわず、公久は喋り続ける。 「彼女は人身売買と同じように『食材』である人々を人肉嗜好者に売り付け、彼女自身も大量の『食材』を手に入れ、食していたのです」 「・・・・」 「あの病院も、同じです。患者の何割かは、『食材』です。そして、赤沼 伊緒理さん。貴女も『食材』としてあそこにいた」 「・・・・?」  ふと、伊緒理が不思議そうな表情を浮かべる。今まで無感情だったのに、ようやく人間らしい表情になったようだった。 「・・・私は、病気であそこにいた。それは確か?」 「ええ。いくらか捏造はありますが、生まれつき貴女が病弱なのは確かでしょう。貴女自身、よくわかっているはずです」 「・・・・だったら、なんで10年以上、私はあそこで生きていたんだ」  ・・・ああ。  食材ならさっさと食われていると、言いたいのだろう。公久はすぐ理解した。 「・・・確かに。あの病院は早くて1ヶ月、遅くて1年と早いペースで入院患者は食われていますしね」 「だったら、私は───」 「赤沼 ゆきえの娘、だからですよ」 「え?」 「あの病院は赤沼の手の中にあった病院で、赤沼の命令には必ず従っていました。・・・赤沼の命令で貴女は入院させられていたのではないかと」  ここで公久は用意されていたお茶を飲む。冷めていて、一気に飲み干せた。 「・・・そして、どのくらいかして、赤沼は逮捕されました。貴女はここで微妙な立場に立たされます」  と、公久は回り続けている寿司の中から3皿適当に選び、並べた。
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