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店を出て、車に乗り込んだ時だった。公久の携帯がなった。
公久は誰かを確認してみると、ああ、と呟いた。
「・・・誰?」
大して興味なさそうに、伊緒理が訊ねてきた。相変わらずの彼女の様子に、相変わらず事務的な公久は答えた。
「・・・仕事仲間です」
上司というより、先輩からだ。年齢は公久の方が上だが、職場では公久はまだ下の立場だ。
───ぴっ。
ボタンを押して、携帯を耳元へ移動させた。
「もしもし」
『キミヒサさん?姫奈です。赤沼 伊緒理を保護したと聞いて・・・どうですか?状況は』
「ああ・・・まあ、普通ですよ。先輩」
公久はこの先輩を未だに名前で呼ばず、ずっと『先輩』で通している。
「今食事を終えて、車の中です」
『どこのお店?』
「回転寿司です」
『・・・意外なとこ来たんですね』
「彼女が行きたいと言ったので」
『そうですか・・・。あの、それでですね』
先輩は何故かあたふたと喋る。
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