ムゲン の カケラ 3

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  『昔雨』が降り止んで、吉之助さんも帰ってきて。   注文も順調、発送も順調、入金も順調。   これで、またしばらくは食いっぱぐれることもない。   「じゃ、俺もそろそろ出かけるかな」   一矢さんは、朝のコーヒーを飲みながら、店の窓辺から空を見上げていた。   「吉之助さんの説教も済んだことですしね」   「言うな」   がっくしと肩を落とす後ろ姿は、生気ゼロ。   「ワシ、マダ、言イ足リナイケド、ネー」   いつの間にやら現れた吉之助さんが、そのままピタリと一矢さんの背中に張り付いた。   「三日連続夜中に起こされて、延々とお小言状態だってのに、まだ言い足りないのかよ」   「年寄リノ説教ハ長イノダ」   吉之助さんは、楽しそうにウフフーン、と鼻を鳴らす。   普段、年寄り扱いしたら、怒るくせに。   「るーと、何カ、言イタソウダネー」   看板黒猫ぬいぐるみロボットの黒い瞳が、きらりんと僕に向けられた。   「いいえ。何も」   僕まで説教の対象にされては、たまったものではありません。   「ソレニ」さらに、吉之助さんは嬉しそうに「由良モ、会イタガッテイル、ト、思ウゾ」   一矢さんの顔が強張った。   「由良母さまは、お元気ですか?」   アラガネは、無邪気に僕に問いかける。
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