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美女が見えなくなってもしばらくぼーっとしていたが、野良猫に威嚇されて、慌ててもらった紙を広げた。
『タカちゃんへ(笑)
振り向かれて、すぐにタカちゃんじゃない事に気付きながら、言い出せず、恥ずかしいので意地をはってしまいました。
すみません。
でも、楽しかったです!
ありがとうございました。』
頭の上で、雀がチュンチュンと笑っていた。
・・・連絡先とか書いてある事を、ちょっとでも妄想した僕が馬鹿でした。
雀はさらに笑う。
あっ!すれ違った散歩中の犬まで笑ってたような・・・。
トホホ。まあそんなもんだ。
けれども四月の午後、太陽だけは僕を慰めてくれた。
「太陽はあったかいなぁ。」
自嘲した僕だけど、柔らかな日差しは、心に残っていた密かな期待を包みこんで、ふわっと押し出してくれる。
期待して、いいかな。
「・・・明日も散歩行こう。」
次の日も、太陽に誘われて散歩に出た。
同じ時間。
同じ場所。
肩をポンっと叩かれる。
四月の午後は、限りなく優しい。
そう言えば、四月って出会いの季節、だもんな。
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