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「じゃあ、健康食品?」
「う~ん、確かにタカちゃんちょっと細いから、栄養あるもの食べた方がいいかも。」
「サラ金?」
「ご利用は計画的に、な~んて。」
クスクス笑う美女。
僕もなんだか楽しくなってきた。
「ひょっとして、芸能界にスカウト?」
「ユーも芸能界に入っちゃいなヨ!ねえ、似てる?似てる?」
「まさか、僕を誘拐するとか?」
「そんなヒドイ事しませんって。」
「あ、サークル勧誘?」
「相撲部にようこそ!なんて、タカちゃんじゃ無理か。」
そばの家の庭。
嬉しそうに咲いているチューリップに、戯れる蝶。
四月の午後はみんなに優しかった。
住宅街の道端で、ひとしきり笑う、美女と僕。
「分かった!新聞の勧誘だ!」
僕がそう言ったら、彼女は鞄から手帳を取り出し、ピリッと一枚破くと、その紙に何か書きながら答える。
「正確!・・・タカちゃんは新聞読まないから・・・よし、はい、これでも読んでね。」
美女は、僕にその紙を渡すと、じゃあね、と手を振って歩いて行った。
その足取りは、蝶よりも軽やかに。
美女が見えなくなるまで見とれていた。
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