プロローグ

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 郁香は軽く身をよじって螺春の左拳をかわし、空を切った螺春の左腕を右手で押さえ……更に上へと押し上げる。  刹那、上へと押し上げる為に上げた郁香の右手が、そのままクンッ! と斜めに落ちた。  その先にあったのは、一瞬だけガラ空きになっていた螺春の顔面だった。  バキイッ!  俗に言う裏拳が、螺春の顔面へと見事にヒットする。  もっとも……郁香が放った裏拳は、スポーツ的な格闘で使われている技ではない。  簡素に言うのなら、戦う為の技だ。  戦闘的……とでも言うべきか?。  そもそも、ルールなどないし武器を持っている相手とも戦う。  真剣勝負なら命懸けだ。  試合ではないので『汚い』とか、そう言うのはない。  むしろ戦術になる。
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