第四章・僕、私の新学期

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 けれど――私はこれを『前向き』と言いたい。  その単語は、母がいつも口癖のように私へと言い聞かせてくれた言葉であった。  だから……私は、母が教えてくれた『前向き』な思考を出来る限り持っていたかった。  そうする事が、もはや不可能となった母へのささやかな恩返しになるのではないか?……そうと、私は考えていたのだ。  こうして、私は今日も宏和くんとの生活を前向きに生きる形で、日々を楽しく過ごしていた。  今日の私は、校内の中庭で宏和くんと一緒に昼食を取るつもりだ。  この『昼食』の為……私は朝の5時に起きてお弁当を作った。  私の故郷では『弁当を持つ』と言う風習がない。  そもそも、冷たい食べ物を口にする文化がなく……よって、刺身は今でも苦手だ。
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