-光のどけき春の日に-

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日曜日 「今日見る映画はね、私の趣味で申し訳ないんだけど、ラブストーリーなの。記憶障害の女の子とその子を愛する男の子のお話。私も小説でしか読んだことないから楽しみなんだ。」 『なるほど、病気ですか。泣きのNo.1アイテムの一つですね。』 「もう、そんな冷静に分析しないでよ。普通に楽しみたいのにー!カレー食べさせるわよ。」 『あ、いや、すみません。カレーだけは本当に勘弁してください。』 最近知った事なのだが、彼はカレーが苦手らしい。一流の料理人なのに。 料理人は好き嫌いが激しいと聞いた事があるけど、カレーが嫌いなんて、珍しいにも程がある。 「誠さん、何でカレー嫌いなんだっけ?」 『というか…ペッパー系の辛さが苦手なんですよ。そもそも辛さというのはですね、味覚には含まれず口腔内の痛覚、つまり痛みなんですよ。ですからわざわざ料理を食べて痛い想いをするというのは僕としては何とも理解しがたい文化なんですよね。』 「あ、そうなんだ?へぇー全然知らなかった。」 彼と仲良くなるとこういった料理に関する話を多く聞くようになった。 「私は茄子が嫌いなのー、あのぐちゃっとした感覚がどうしても駄目で。」 『食感の問題ですね、食感とはテクスチャーと言いまして…』 そんな会話をしながら映画館に到着した。 上映中、不覚にも私は泣いてしまった。さすがに声をあげながら泣くほどではなかったけれど、ちょっと恥ずかしかったな。 『いやぁ、面白い映画でした。あぁいった内容のものがお好みなんですね。』 「本当に面白かったんですかー?」 『勿論です、それでは。そろそろお店の方まで戻りましょうか。』 私達は「ミシュラン」のある駅まで戻ってきた。 『あ、ちょっと待っていて頂けますか?すぐ戻ります。』 そう言うと彼は急いでどこかへ行ってしまった。 どうしたんだろう…。 彼がいなくなってから20分近くが経った。苛立ちよりも不安や心配が募り、もういてもたってもいられないような気持ちだった。 ♪~好きだよ、残さず全部ほら、二人の事を話そうよ~♪ ピピッ 【ミシュランに先に行っていて頂けますでしょうか。】 彼からのメールだ。 仕方なく私はその場を後にし、「ミシュラン」へと向かった。 【BGM 未来の地図...Mi】
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