-花の散るらむ-

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目が開いたままの香織の首が大きな鍋に放り込まれた。 『丁寧に塩素で消毒して、髪はたんぱく質、眼球はコラーゲンそして残った血液は鉄分がありますね。素晴らしいスープが出来上がりますよ。』 『貴方が最初にこの店に来たときに食べたのは、この店を一緒に建ててくれた昔の彼女の肉なんですねぇ…。』 『美味しかったでしょう?彼女も、僕を愛してくれていましたから。』 カラン、コロン。 『いらっしゃいませ、おや浅井さん。』 『あーもう最低!ちょっと聞いてよ新藤さんっ!私の彼氏ずっと浮気してたのよ!もう別れてやったわ。あんな男!』 『そうなんですか、私も香織さんにフラれてしまいましてね、実家に帰ると言って今朝方出ていってしまいましたよ…。』 彼の口元が緩んでいた事に、真希は気づかなかった。 『えぇー!?本当に!?あの子ったら私に連絡もしないで仕方ないんだからー。あ、新藤さん何かお料理あるー?』 『…えぇ。ちょうどスープが出来上がった所です。ステーキも焼き上がりますよ…。』 (香織) 「カフェ・ミシュラン」 私は恋と仕事を両立してたつもりだった。 でも、本当に恋と仕事を両立してたのは新藤 誠だった。 いや、違う。彼は仕事に恋をしていたんだ。最初から私なんか見ちゃいなかった。 私を一度も抱かなかったのは、大事にしたいからじゃなくて、大事な食材だから汚さなかったんだ。 今までの出来事はあの人にとってみれば、全てスパイス。私を美味しくする為の、スパイス。 誕生日も、優しさも、彼への愛を増長させる為のまやかし。 あの人にとってみれば、 女は全て ジャガイモなんだ。
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