-久方の-

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ドア押して開くと、カランと鈴がなった。 「へー、中も斜めってるのかと思ったら意外とそうでもないのね!」 内装は、木の香りが漂うシックな造りだった。避暑地の別荘に来たのかと錯覚させる。客席はテーブルが5、6卓にカウンターバーで5席くらいある程度だった。クラシック音楽が店内を良い具合に駆け巡っている。 しかし、席の割にお客が一組も入っていなかった。立地が悪かったのだろうか。 『あのー…すみません。やってないんですか?』 真希がちょっと声を張って店内に響かせた。 すると奥からドタドタと、まるで小学生が走り回っているかのような効果音で一人の男性が現れた。 『いや、これは大変失礼を致しました。いらっしゃいませ。カフェ・ミシュランへようこそ。』 男は背が高く髭を生やして、紳士的なイメージの沸く爽やかな人だった。 超ネクタイが似合いすぎていて気持ち悪い。 『お好きな席へどうぞおかけください。』 私と真希は窓際の席を選んで座った。 『何かオススメの料理とかあるんですか?』 『はい、只今の時間帯はランチサービスを行っております。コーヒー、デザート付きで900円でございます。』 「妥当な値段なのね、私はそれを頂くわ。」 『あら、じゃあ私もそうします。ランチ2つで。』 『かしこまりました。少々お待ちくださいませ。』 男は厨房に入ると調理を始めた。スパイスと肉の焼ける良い香りが立ち込めた。 「何かさぁ、こうして私達だけしかいないと富豪の御嬢様になった気分よね。」 『あー香織、機嫌良くなってきたね。良かった良かった。』 「真希さんのお陰様々でございますぅー。にゃはは。」 『当たり前でしょー?分かってるじゃん!ねぇ、デザート何にする?』 メニューには四種類のデザートの名前が載っていた。 ・薫り苺のムース ・紅茶のシフォンケーキ ・ふんわりチーズケーキ ・季節フルーツの贅沢タルト 「…うーん。苺のムースかな。」 『絶対そうだと思った!あんたって【かおり】って言葉が入ってると弱いよねー。』 「良いのー。本当に食べたいんだもん!」 そうこうしているウチに料理が運ばれてきた。 『お待たせ致しました。』 【BGM Balamb GARDEN...FFⅧサントラより】
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