3.真夜中の序章

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3.真夜中の序章

今日は過ごしやすい夜。 月の明かりが薄いカーテンを通して春風の室内を照らす。 でも何だか勉強がはかどらない。 ママも寝ちゃったし、自分でココアをいれるのもなぁ…。 参考書とノートを広げたデスクの前で、肘をついてただペンが回る様子を見ている。 「囚われてるね。」 「そうみたいね。」 ま、まさか… 誰も居ない筈の部屋で声がする。 恐怖が全身を駆け巡って、恐る恐る振り向くと…… 薄暗い、でも物の位置ならはっきり分かる月明かりの部屋の中。 背後に距離を取って置かれたロフトタイプのパイプベッドの上に、夢で見た、黒いランドセルに黒髪の少年が居た。 「ななななな何してるのよっ?!何で此処にッ?」 思わず椅子から転げ落ちそうになりながら、全身を机側に引いて出来るだけ離れようとする。 けれど、黒髪の少年はただそこに立ったまま近寄るでも遠ざかるでも無い。 「慌てすぎよ。」 「慌てすぎだね。」 「ひぃ…!…ねぇ…もう一人はどこに居るのよぉ……」 その少年以外に可愛い女の子の声が聞こえる。 でも!幾ら可愛くたって姿が見えない以上恐怖の対象以外のナニモノでもないっ! 春風は半泣きしながら辺りを見回す。
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