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「足元だよ」
少年が抑揚の無い声で教える。
「ひいぃぃ!」
足元と言えばデスク上のスタンドのお陰で覗きたくも無いくらい真っ暗な場所。
そんでもって、幽霊さんが出るにはお誂え向きな場所だ。
春風は素早く足を上げて椅子の上に置く。
水に追いやられるネズミみたいな感じだ。
でも、その暗闇から出てきたのは生白い手首とか異様に長い髪の毛とかじゃなくて
「にゃあ~お」
うちで飼っている黒猫のミサトだった………
「ミサトじゃない!嘘つき!声の正体は誰なの?!」
騙された感が強くて、思わず少年に詰め寄る。
すると後ろから、さっきの声が聞こえてきた。
「だから私よ」
振り向くとちょこんと床に座るミサトただ一匹。
「………ミサ…ト?」
「なぁに?」
「…夢よね」
「試しにかじってみる?」
「お願い」
ミサトの前に手を差し出す。
クンクンと匂いを嗅いだと思ったら、いきなり噛み付かれる。
「ぃいったあぁああい!!!!!!」
「かじってって言ったわよね?」
「間接的に言ったねぇ」
「そのコンボはもういい!」
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