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血は出ないものの、四つの牙の痕が白く残る手をさすりながら私は二人………いや、一人と一匹に突っ込みを入れる。
「何よ。折角夢で済まそうとしてるのに、何で現実に出てくるのよ黒髪少年!
それになんでミサトが喋るのよ!」
「黒髪少年ってボクのこと?」
「そうみたいね」
ふむふむと言う感じに向き合って話す一人と一匹はお互い艶やかな黒を持つ同士でとても似合っている………のだがそれ何だか余計に癪に触った春風はわざとらしく咳払いをする。
「まぁ落ち着いて。
事は結構重大なんだ。漫才してる暇はない」
こんなちっこいヤツにそんな偉そうに難しい単語並べて話されるとちょっとムカつく。
ってか漫才って何よッ。
「夢がもうすぐ動き出すんだ」
「夢?」
何だか今日はやけにこの名詞を口にする日だな。
「そう。物語を失った夢たちだ」
「物語を失った夢…って、君の言ってた物語が失われる~ってヤツと一緒?」
「違うよ。厳密にはね。
ただ……昔は夢と物語は一緒だった。」
「どう言うこと?」
「だからね、夢は物語が無いとダメなのよ」
ミサトが綺麗な毛並みを纏う小さな体を伸ばしながら言う。
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