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2.夢…ユメ
赤く染まった夕暮れ時、私は後ろから声をかけられた。
振り向いたら、小さな、小学生位の男の子。
黒のランドセルに黒髪。
前髪が少し長めで影を作り表情が分からないけど、さっき呼び止めた声は幼めの声だったから、この子が私を呼び止めた…で、良いんだよね?
「誰の心にも、物語があるんだよ」
「……へっ?」
余りに唐突で、思わず裏返った変な声が出てしまった。
「な、なぁに?」
何が言いたいのか分からず、取り敢えず、膝に手を当てて少し屈んでみる。
けれど、それでもその小学生位の男の子の表情が見えない。
逆光だからかな…?
「誰の心にだって、物語がある」
さっきも同じことを聞いた。間違いなく、この子がそう言ったのだ。
よく分からないまま固まる春風を無視して少年は続ける。
「希望ある未来へ、一段一段昇る、心の物語。
今それが奪われて居るんだ…!
気を付けて。物語が奪われない様…」
その男の子が全て言い終わる前に、また後ろから声が聞こえた。
「ねぇ」
生意気そうな声の掛け方。でもやっぱり幼めの声。
振り向くと、夕陽に照らされてキラキラ光る肩まで伸ばした金髪が印象的な…、さっきの少年と同じ位の背丈の男の子と、その子を見守るかの様に半歩後ろに佇む男性が居た。
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