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二人に共通するのは、極めて礼儀正しい服装だと言うこと。
少年はまだ小さいのにきちっとしたスーツを着て居て、後ろの男性も、燕尾服を着て、白い手袋をしていた。
まるで今から、大きなコンサートホールで指揮を執るかの様に。
少年の瞳は髪と同じ金色だった。
男性の顔は……山高帽子を深く被っているせいで分からない。
ただ背の高さと服装が、寡黙な紳士と言う印象を与えるばかりだった。
またもや唖然とする春風を睨むように見つめて、金髪の少年は言った。
「希望ある未来…?笑わせるな。
そんなもの一度踏み外して落ちたら終わりだ。一歩一歩昇った階段も、落ちたらぜーんぶオシマイ。
だったら皆踊り場で踊れば良い。
心の物語?そんなモノ知るか。
……夢は皆、僕のモノだ!!!」
噛み付くように最後の台詞を春風に投げ付ける。
ビクッっと怯んだその一瞬に…
金髪の少年と男性は目の前から消えて居た。
辺りを見回しても居ない。それどころか、黒髪の少年も居なかった。
突然、春風は恐怖に襲われた。
何が起きているの?
気付けばこんな時間なのに何も音がしない。
鳥の鳴き声も、下校する生徒が居る様子も、夕飯の仕度をする家庭の音も何もない。
「……いったい…何なの?!何だって言うのよー!!!!!!」
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