夜と悪魔

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「なんで夜が来ないんですか?」 眠たそうなマリアさんに僕は問う。 「説明すると長くなるわよ?」 「かまいません」 僕は揺らがない。 「いいわ。じゃあ説明するわね」 マリアさんは椅子に腰掛けた。 かつて、この国は平和だった。それもずっと昔、私がこの国を創った頃。2000年も前になるわね。その頃はまだエルフとフェアリーと天使しか住んでいなかった。だけど1200年頃、ファンタジアンと呼ばれる人達が現れた。それがあなたたち、人間よ。別にそれは悪いことじゃない。むしろ、新しい種族ができたことで、この国は前よりにぎやかで、豊かな国になった。 ところがそんなある日、事件がおこった。 ダリアというエルフが、一人のファンタジアンを殺してしまった。それが事故だった為に、彼は混乱した。迷いに迷ったあげく、ダリアはあるところにその人を隠した。どこに隠したと思う? そう、自分の体の中によ。ダリアは泣きながらその人を食べた。罪悪感に狩られながら一生懸命食べた。そして気付いた。ファンタジアンが美味であることに。気付いてしまったダリアは、次々とファンタジアンを襲った。そしてある日ダリアの体に異変がおきた。白かったエルフ特有の肌はよどんだグレーに変わり、瞳は光をなくした。そうしてゴブリンが生まれた。ダリアは今度はエルフに手を出した。元は同じ種族だったエルフにまで…。ダリアはエルフをさらい、自らの手でゴブリンに変えていった。そして、ゴブリンはついにエルフと同じ数にまでなってしまった。 それだけならまだよかった。今度はエルフとゴブリン、二つの種族の仲を嘲笑うかの如く、悪魔が生まれ、ファントムが生まれた。いよいよこの国に終わりが近づいて来たとき、ドラゴン族が現れた。彼等は私たちのために死力で戦ってくれた。そのおかげでゴブリンは後退し、悪魔は城に帰って行った。 私は二度と悪魔が外に出てこないように、自分の心臓を代価にこの国から夜を消した………。
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