4人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
あの日もいつものようにバスに乗って学校に向かっていた。窓の外で広がる単調な景色。空さえ霞んで見える。バスに揺れる僕の体は魂が抜けたように頼りない。
しかし、そんなこと僕に関係ない。
その日は何故か眠かった。夜更かしをしたわけじゃないのに、僕のまぶたはバスの中でとじてしまった。
目が覚めると、そこは今までに一度も見たことがないところだった。白い大地が広がり、空まで伸びた大きな木が見える。
立ち上がると、ふわっと浮くように体が軽く感じられ、このまま空まで跳べそうだった。
ここで僕は我に返った。「ここはどこだよ・・」
とにかく歩き出した。ここにいてはまずい。早くもとの場所へ戻らなければ・・・。
しかし、その元の場所さえ僕にはわからなかった。ひたすら歩いた。歩き続けた。20分程歩いたころだったかな、一人の女性が立っているのが見えた。何故女性と思ったのかは僕にもわからない。とにかく人がいて安心していたからその時は木にも止めなかった。
その女性に歩み寄ると、僕に気付いたのか、振り向いた。
「あら?珍しいわね。あなたどこからきたの?もしかして、人間界?」
何をいっているんだこの人は?
「ねぇ、どこから来たの?」
「南村田町」
「やっぱりそうじゃない。人間なんて久しぶりだわ」
この人の言っている意味が全くわからなかった。もしかして、ちょっとおかしい人かも。
「ここはどこですか?」
「ここ?ファンタジアよ」
「は?」
ふざけてんのかな、この人?
「なんですか?ファンタジアって?」
「夢の国よ」
やっぱりこの人は頭おかしい。
「僕、早く帰りたいんですけど」
「それは無理よ。帰るには虹を渡らなきゃいけないんだから」
僕も我慢の限界だった。「ふざけるなよ!何が虹を渡るだ!いい加減にしろよ!」
「ふざけてなんかいないわよ。ここは、ファンタジアよ」
怒鳴った僕を見ても、彼女は平静を保っていた。
「イライラするのは仕方ないわね。自分が死んだなんて知ったらテンション下がるものね」
「え?今、なんて・・・・?」
聞き間違いだよな?心臓が速く脈打つ。
「だから、君はもう死んだの」
やっぱり信じられなかった。
最初のコメントを投稿しよう!