無理矢理旅立ち

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あの日もいつものようにバスに乗って学校に向かっていた。窓の外で広がる単調な景色。空さえ霞んで見える。バスに揺れる僕の体は魂が抜けたように頼りない。 しかし、そんなこと僕に関係ない。 その日は何故か眠かった。夜更かしをしたわけじゃないのに、僕のまぶたはバスの中でとじてしまった。 目が覚めると、そこは今までに一度も見たことがないところだった。白い大地が広がり、空まで伸びた大きな木が見える。 立ち上がると、ふわっと浮くように体が軽く感じられ、このまま空まで跳べそうだった。 ここで僕は我に返った。「ここはどこだよ・・」 とにかく歩き出した。ここにいてはまずい。早くもとの場所へ戻らなければ・・・。 しかし、その元の場所さえ僕にはわからなかった。ひたすら歩いた。歩き続けた。20分程歩いたころだったかな、一人の女性が立っているのが見えた。何故女性と思ったのかは僕にもわからない。とにかく人がいて安心していたからその時は木にも止めなかった。 その女性に歩み寄ると、僕に気付いたのか、振り向いた。 「あら?珍しいわね。あなたどこからきたの?もしかして、人間界?」 何をいっているんだこの人は? 「ねぇ、どこから来たの?」 「南村田町」 「やっぱりそうじゃない。人間なんて久しぶりだわ」 この人の言っている意味が全くわからなかった。もしかして、ちょっとおかしい人かも。 「ここはどこですか?」 「ここ?ファンタジアよ」 「は?」 ふざけてんのかな、この人? 「なんですか?ファンタジアって?」 「夢の国よ」 やっぱりこの人は頭おかしい。 「僕、早く帰りたいんですけど」 「それは無理よ。帰るには虹を渡らなきゃいけないんだから」 僕も我慢の限界だった。「ふざけるなよ!何が虹を渡るだ!いい加減にしろよ!」 「ふざけてなんかいないわよ。ここは、ファンタジアよ」 怒鳴った僕を見ても、彼女は平静を保っていた。 「イライラするのは仕方ないわね。自分が死んだなんて知ったらテンション下がるものね」 「え?今、なんて・・・・?」 聞き間違いだよな?心臓が速く脈打つ。 「だから、君はもう死んだの」 やっぱり信じられなかった。
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