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「嘘だよな?」
「何が?」
「僕が死んだなんて、嘘だよな?」
彼女の目はとても澄んでいて、嘘をついているとは、到底思えなかった。
「・・・・・・」
けれど、自分が死んだなんて誰でも信じたくないはずだ。
僕もそうだった。
「なんとか言ってくれよ。僕が死んだなんて嘘だよな?嘘だって言ってくれよ・・・」
「・・・ホントよ」
その言葉を聞いたとき、僕は彼女を直視出来なくなり、その場に膝をついた。
「そんなに落ち込まないで・・・」
彼女の言葉も僕の耳に届かない。
しばらく沈黙が流れたあと、急にひらめいたように彼女が声をあげた。
「そうよ、忘れてたわ。人間にはこれを渡すんだった」
そういうと、彼女はどこから出したか古い紙を僕に渡した。
「人間なんて十年ぶりだからすっかり忘れてたわ」
僕はその紙を広げる。そこにはこう書かれていた。
『夢の国ファンタジアへようこそ。内山浩二様、貴方は今からここの住人です。しかし、元の世界へ帰ることも出来ます。ここに住むか、帰るかは貴方次第です。
この国は、夢や希望で創られています。しかし、望みのない者が集います。貴方もきっとそうでしょう。
そして、申し訳ありませんが、帰りたいという望みは叶いません。ここでやることをやり遂げなければ虹は出ません。どうか、この国で夢や希望を見つけて下さい』
僕は何度も読み返した。「どう?あなたはなんて書いてある?」
あなたは?人によって違うのか?
僕は書いてあることを読み上げた。
すると彼女は初めて困ったような顔をした。
「う~ん・・・、重症ねぇ・・・」
重症?何が?
「あなた、自殺じゃないでしょうね?」
恐る恐る彼女は聞く。
「はい。というか、死んだ記憶がないんですけど・・・」
「なら事故ね。よかったわ」
人が死んでいるのに笑顔で安心する彼女をぶん殴りたかった。
「自殺の人はね、だいたいがこの国に残るの。だけど私は死んだ人間を元の世界へ帰す役目があるの。わかる?」
「はい・・・」
「だから、自殺じゃないだけまだ楽なのよ」
何だろうこの気持ちは?彼女を消したいと思う気持ちは?殺意・・・?
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