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涙が邪魔して声の出せない私は、ただ何度も頷く。
「それから…さっき沙由が間違えて抱き着いたのは、俺の兄貴の奏(ソウ)。あと、綺麗なお姉さんって言ってたのは妹の真奈美。前に電話しただろ?
俺が目移りするわけないだろ?沙由だけだって…。何回言わすの?(笑)」
こんなこと言われて…私の涙は留まるところを知らない。
『沙由だけ』…それだけで十分すぎる。
「ごめんっ…な…さい。ありがと……うれし…。」
言いたいことは山ほどあるのに、とぎれとぎれになってしまう。
「沙由…落ち着いてから、話して?」
先生は私を抱きしめながら、私が泣き止むまで頭を撫でてくれていた。
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―――――
「ごめん…泣きすぎたね。」
やっと涙が止まって落ち着いた私は悠から離れて悠の顔を見た。
悠はにっこり笑っている。
「えっと…あのときはホントにごめんなさい。私、加奈に妬いてたの。
すぐに自分が馬鹿だったって気付いたんだけど…私も嫌われたと思って謝れなくて…。
よかった…悠に嫌われてなくて。大好きだから!」
私はそのとき悠を見上げて、初めて気付いた。悠が浴衣を着ていることに…。
なんで気付かなかったんだろ…ありえない!
てか…かっこよすぎる!
私がしばらく先生に見とれていると、先生に苦笑いされた。
「何?誘ってるの?」
悠はニヤリと笑って言うと、クイッと私の顎を持ち上げ、顔を近付けてくる。
「違っ!見とれて…っ…。」
否定する私を無視して、悠は唇を重ねてきた。
触れるだけの軽いキスなのに、私はドキドキしすぎて……
「…うっ…。」
腰が抜けて、フラッとしちゃった…。
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