1129人が本棚に入れています
本棚に追加
そうわかったらいつの間にか気付かないうちに柊って人を見つめていた。その冷たい目を見てやっぱり思うことがある。
その目にどこか見覚えがあるのかも知れないって……。
☆
……さて、と。新聞部の勧誘も断ったことだしそろそろ帰らせてもらうとしますかね。
そう思った俺は椅子から立ち上がり、扉の方に体を向けた。
「…ね……」
「ん?」
すると蚊ほどに小さな声で平田さんが何かを呟いた。俺はつい気になって顔だけを平田さんのほうに向けた。
「お願い」
「………………」
「……新聞部に入って。お願い」
平田さんがそう言った瞬間、光を纏った一つの雫がポロっと平田さんの顔から落ちていくのが見えた。
肩が震えている。
泣いているのか?
俺が断ったからか……?
了承してくれるだろうと思っていた俺が断ったから……?
チッ、なんか後味わりぃな。
……ったく、まぁいい。
俺は視線を平田さんから前に戻して歩き始めた。一番俺の近くにいた女子も、榊さんも俺を止めようとはしなかった。
そして俺は扉のノブを回して扉を引いて廊下に出る。
「あっ、そうそう」
扉を閉める前に俺は徐(おもむろ)に口を開いた。そして顔だけを平田さんたちの方に向けた。
「名前くらいだったら貸してもいいけどな」
俺がそう言うと平田さんが俯いていた顔を上げた。目の周りが少し赤みを帯びていた。
……やっぱり泣いていたようだ。
最初のコメントを投稿しよう!