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「あそこだな? よっしゃあ、おれイッチバーン!」
席が分かると修平が走り出した。
それに渡辺が反応する。
「あ、修平お前、そこおれが座ろうと思ったところ!」
「知りませーん。窓際はおれのって決まってんの。ワタくんは床にでも座ったらどうですか?」
「てめえ……」
「ちなみにもう一個の空いている窓際の席は遥香のね。あ、木下でもいいけど。とりあえずワタは無理だから。この椅子がそう言ってる」
修平がくり出すむちゃくちゃな言い分に渡辺が殴りかかっていく。
子供のようなケンカに、教室内からちらほらと注目を受けていることは気付いていないようであった。
木下が慌てて渡辺を止めに行ったのも含め、一連の騒動を遠くから眺めながら、遥香は黒板の横で本を読んでいる女子生徒に視線を運んだ。
彼女は……委員なのだろうか。
茶色い短い髪を無造作に散らし、椅子だけを教壇の近くに置いて足を組んでいる。
顔は無表情。この中で平然と座っている。
おかげで遥香は彼女の存在に今まで気づかなかった。修平たちにいたっては未だに気づいていない。
それほど、存在感というものが感じられないのだ。
彼女がかけている眼鏡が異様に光を跳ね返している。
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