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教室内の人々は、そんな委員長に声をかけるかを迷い、それぞれ無言になる。
しーん、とした沈黙ではないが、どこかしら重たい静けさが教室をつつんだ。
声を出すにも出しづらい。
そんな中、もう一度教室の戸がガラリと開かれた。
「あー、疲れた!」
入ってきたのは、またも女。今度は少し茶色がかったショートの髪。
両手いっぱいに藁半紙(わらはんし)を抱えている。
それを一気に床へ落下させた途端、ふわりとゆるやかに舞うその髪はその人の人柄を表すようで、先ほどまでの重い空気が嘘のように、皆、表情が柔らかくなった。
委員長がパッと顔をあげる。
今まで微塵にも動かさなかった表情をいとも容易く崩し、笑った。
「お疲れ」
透き通る、きれいな声が響きわたってゆく。
だが、それも、思わず見入ってしまう笑顔も、決して教室の中にいる人々に向けて放ったものではない。
その事実は、彼女に振り向いてもらおうと奮闘していれば誰しもが思い知る。
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