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駅に降りれば、そこは敵地(アウェイ)。心が休まるどころか居場所さえもない。
明るい中心地から中心地までの間の小さな駅。小さい山の中腹に、民家に囲まれて建っている。
こんな駅でも、この山の少し下にある中学校に通っていた奴らにとってみれば、ありがたいものだ。
高校生になったときの足になる。
その便利さは間宮 遥香(まみや はるか)も痛感しているところだった。
この春、高校生になった遥香は、この駅を使うのが嫌で一度だけ自転車で中心地にある高校へ行ったことがあった。
だが、見事、二時間三十一分という大記録を残し遅刻した。
これはさすがに無謀だったと思い、仕方なく駅を利用し電車にのれば、高校の最寄り駅まで十五分とくる。
自転車での通学は諦めざるを得なかった。
――それでも、何度自転車で通学しようと思ったかわからない。
おれは、この空間が嫌いだ。
駅のホームに立てば、右を見ても左を見ても視線とぶつかる。
しかし、合えば反らされる。そして反らした奴は近くにいる奴と、遥香についての話をする。
良い話? まさか。どうせ、おれの悪口だろう。
この駅を使う連中は、おれの事を、おれの家の事情を、よく知っているから。
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